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ありがたいことに、こんな私にわざわざアポを取って来て下さる方がいる。スーツ姿の額から流れ出る汗を拭き拭き、上目遣いで切り出されるのは、決まってこんな質問だ。

「あのう、これ……海外で(もしくは、シンガポールで)売れますかね?」

不安げな彼の目に写る私は、シンガポール市場専門のリサーチャーであり、シンガポール企業を顧客に持つマーケターであり、「なんかイッテQとかに出てたらしい人」である。彼の大学時代の友人が、「俺もよくわかんないんだけど、シンガポールで商売するならとりあえずイムラさんに会っておいたほうがいいよ、ちょっと占い師っぽいしね」と謎のお墨付きを出した人である。彼の目が語りかける。どうかどうか、売れないなんて言わないで。わざわざ日本からプチプチを4重に巻いて大切に持ってきた、社運を懸けたこの製品を、スパッと一刀両断なんかしないでお願いだから!しかしそこで……

「愚問だな」

と、ジョジョ立ちしながら言い放つ私。ズキュゥゥゥン!!……となれば、そこにシビれる!あこがれるゥ!のだけれど、小市民な私はたいていこんな風に答えることにしている。「あのう、逆にお伺いしますが、どれくらい売りたい感じですかね?」と。
問題は「どれくらい売りたいか」「売るつもりがあるか」

正直、日本で通用するような商品である限り、多少であればなんでも売れるのである。シンガポールには一定の日本ファンの皆さんがいて、しかもそれはどう見てもシワシワなアラサー動画ブロガーである私たちニンジャガールズを「(薄目を開けて見れば)かわいい」と愛でてくださるような心の広ーい方々なのだ。どんな商品やサービスも“日本のものだから”という理由で受け入れてくれる土壌は、ある。問題は、どれくらい売りたいのか、売らなければならないのか、という点だ。

お偉いさんに見せるためのちょっとした成果として、「どうですか!シンガポールで50個も売れましたよ!」って実績を作りたいくらいなら、こうした理解のある皆様に、ちょこちょこっとお買い求めいただく方法を考えれば良い。正直、シンガポール在住の日本人に販売して、「シンガポール(の日本人の間)で売れてます!」ってことにしちゃうことだってできる。でもそうじゃなくて、ちゃんとたくさん売りたい、この国でガチの商売がしたい、というのであれば話は全く違ってくるのだ。

飛行機に乗る時、携帯と一緒に商才スイッチまでオフにする必要はない

こう書いてしまうと当たり前のことなのだけれど、日本のビジネスパーソンには、一度日本の国境をまたぐとあらゆる商才スイッチがオフになってしまわれる方々が多いように思う。もちろん日本の常識を押し付けて来られても迷惑は迷惑なのだけれど、だからといって当たり前の商売の基本のきまで忘れ去ってしまうのはどうかと思うんだ。

「これはお客さんの財布の紐を緩めそうかどうか」をビクビク気にするんじゃなくて、「お客さんの財布の紐をどうやって緩めたらいいか」っていうのを、今まで培った嗅覚とお客様への愛でもって、自信を持って探求してほしいんだよね。あなたにはそれができるから。

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