それ海外で売れますよ

シンガポールで売るマーケターのブログ

Tag: 市場

「自薦の壁」と観光大使

 

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先日、高橋はるみ知事がシンガポールまでお越しになった際、海外向け北海道観光大使「ほっかいどうスマイルアンバサダー」として任命していただいた。日本人初、シンガポール初のスマイルアンバサダー。身が引き締まる思いというのは、まさにこのこと。

今回北海道庁の方からお話をいただいた際、思い出した出来事がある。

あれは確か、2年ほど前のこと。ニンジャガールズプロジェクトがある程度認知され、シンガポールの新聞各紙に取り上げてもらえるようになり、日本のテレビでも大きく取り上げてもらえるようになってきた頃。私はシンガポール政府観光局にアポを取った。ある程度影響力がついてきたと思った私は、これをシンガポールの観光誘致に役立ててもらおうと、自らボランティアを志願しに行ったのだ。しかしこれが当時の私のバカなところで、イベント等で会う大臣や政府高官に直接申し出れば良かったものを、「そういう方達のお手を煩わせるのもナンなので」と、「総合問い合わせ窓口」のようなところを通してしまった。そして会うことになったオバちゃん職員に、木っ端みじんにされたのだった。

イムラ「あのう、私がシンガポールの観光のためにお役に立てることはないですか?」
オバちゃん「ハ?あんたが?なんで?」
イムラ「一応私、日本の人気テレビ番組とかに取り上げられてて、けっこうシンガポールに貢献してると思うんです」
オバちゃん「ハ?なんであんたのところにテレビが来るわけ?」
イムラ「なんというか……”シンガポールで一番有名な日本人”らしいんですよ一応これでも」
オバちゃん「ハ?あんたが?!ヒーッヒッヒッヒ(絵に描いたような嘲笑)」

というわけで、オバちゃんに私の善意は伝わらなかった。それどころか、「あ、そんなに暇なら、書類の和訳、タダでやらせてあげてもいいわよ?」と言われ、憤りを感じて帰ってくるハメになった。ひとえに私の実力不足が招いた結果だったとは言え、思い出すと未だにムカっとくる。別に何かを売りつけるつもりも何もなく、純粋に自分の築いてきたものをシンガポールの発展に役立ててもらいたかっただけなのだけれど。

この一件以来私は、シンガポール政府公認ではないにしても、民間人として誇りを持ってシンガポールをPRしていこうと心に決め、SG50の際にはスカイスキャナーさんとこんな動画を作ってみたり、今月号のFRAUシンガポール特集で穴場をご紹介したりしている。

https://youtu.be/TV_DVnP3DQA 

北海道の話のはずが、すっかりシンガポールの話になってしまった。閑話休題。

観光客誘致という観点では、圧倒的に北海道よりシンガポールの方に貢献している気もする私が、なぜシンガポール政府観光局に鼻であしらわれ、一方で北海道側からはとても丁重にオファーをいただくことになったのか。そこにこの「自薦の壁」の存在が深く関わっている。「自薦の壁」というのは今私が勝手に作った表現なのだけれども、要するに「どんなものでも、自分自身でオススメする限り、大して評価してもらえない」ということね。やっぱり良いところや素敵なところ、役に立つところなんかは、自分自身で売り込むより他人に推薦してもらうに限る。今回も実は北海道庁に、私という存在を強力にプッシュしてくれた、ある人の存在があったのだ。

個人のみならず、あらゆる企業もまた「自薦の壁」と闘っている。いかに効果的に広告宣伝をしていくのか、いかに戦略的にマーケティング施策を打ち出していくのか、こうした努力は全てこの「自薦の壁」との闘いと言っても良い。社外からそれをお手伝いするマーケターはある意味、自薦の壁の内側と外側を自由に行き来しながら、壁の内側にいる皆さんの闘いを支援する航空部隊のようなものだと思う。立ち位置を正確に把握すること、それをふまえた上でアドバンテージを最大化することの大切さを、いつも心に留めておこう。

 

【お知らせ】今月号のFRaUに掲載されました

 

まだ私も実物は見ていないのだけれど、現在発売中のFRaU2月号に少し掲載していただいた模様。シンガポール人が絶大な信頼を寄せる中華寺院、ブギスの「観音堂」をオススメさせていただいた。

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私はこの観音堂に色々な友達を連れて行きまくっているのだけれど、本当にビックリするほどおみくじが当たる。おみくじと言っても、日本のおみくじのようになんとなく気軽に引いても良いタイプのものではなく、深刻な悩みに対して答えをいただく「ご神託」スタイルのもの。日本人ビジネスマンの皆様も、天の声が聞いてみたくなったらぜひ。

「これ海外で売れますかね?」と訊かないでほしい理由

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ありがたいことに、こんな私にわざわざアポを取って来て下さる方がいる。スーツ姿の額から流れ出る汗を拭き拭き、上目遣いで切り出されるのは、決まってこんな質問だ。

「あのう、これ……海外で(もしくは、シンガポールで)売れますかね?」

不安げな彼の目に写る私は、シンガポール市場専門のリサーチャーであり、シンガポール企業を顧客に持つマーケターであり、「なんかイッテQとかに出てたらしい人」である。彼の大学時代の友人が、「俺もよくわかんないんだけど、シンガポールで商売するならとりあえずイムラさんに会っておいたほうがいいよ、ちょっと占い師っぽいしね」と謎のお墨付きを出した人である。彼の目が語りかける。どうかどうか、売れないなんて言わないで。わざわざ日本からプチプチを4重に巻いて大切に持ってきた、社運を懸けたこの製品を、スパッと一刀両断なんかしないでお願いだから!しかしそこで……

「愚問だな」

と、ジョジョ立ちしながら言い放つ私。ズキュゥゥゥン!!……となれば、そこにシビれる!あこがれるゥ!のだけれど、小市民な私はたいていこんな風に答えることにしている。「あのう、逆にお伺いしますが、どれくらい売りたい感じですかね?」と。
問題は「どれくらい売りたいか」「売るつもりがあるか」

正直、日本で通用するような商品である限り、多少であればなんでも売れるのである。シンガポールには一定の日本ファンの皆さんがいて、しかもそれはどう見てもシワシワなアラサー動画ブロガーである私たちニンジャガールズを「(薄目を開けて見れば)かわいい」と愛でてくださるような心の広ーい方々なのだ。どんな商品やサービスも“日本のものだから”という理由で受け入れてくれる土壌は、ある。問題は、どれくらい売りたいのか、売らなければならないのか、という点だ。

お偉いさんに見せるためのちょっとした成果として、「どうですか!シンガポールで50個も売れましたよ!」って実績を作りたいくらいなら、こうした理解のある皆様に、ちょこちょこっとお買い求めいただく方法を考えれば良い。正直、シンガポール在住の日本人に販売して、「シンガポール(の日本人の間)で売れてます!」ってことにしちゃうことだってできる。でもそうじゃなくて、ちゃんとたくさん売りたい、この国でガチの商売がしたい、というのであれば話は全く違ってくるのだ。

飛行機に乗る時、携帯と一緒に商才スイッチまでオフにする必要はない

こう書いてしまうと当たり前のことなのだけれど、日本のビジネスパーソンには、一度日本の国境をまたぐとあらゆる商才スイッチがオフになってしまわれる方々が多いように思う。もちろん日本の常識を押し付けて来られても迷惑は迷惑なのだけれど、だからといって当たり前の商売の基本のきまで忘れ去ってしまうのはどうかと思うんだ。

「これはお客さんの財布の紐を緩めそうかどうか」をビクビク気にするんじゃなくて、「お客さんの財布の紐をどうやって緩めたらいいか」っていうのを、今まで培った嗅覚とお客様への愛でもって、自信を持って探求してほしいんだよね。あなたにはそれができるから。

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